1980年代頃から数年にわたって描いた、夜空と市松人形のシリーズの一枚です。
ある日古道具屋で市松人形を目にし、「日本人なのだからたとえ油絵でも日本的なものを描こう」と思いその市松人形を買ってきました。しかし、日本的なモチーフをどう扱って良いかわからず試行錯誤を重ね、ようやくたどり着いたのが、京都の嵐山近辺の山のシルエットと月を背景に、岩に座った市松人形を配置する絵だったのです。
この頃よく似た絵を何枚か描き、東京で催される「日洋展」などに何度か出品したのですが、そのすぐ後に「角川文庫」のミステリー小説の表紙に、私のこの絵と本当に良く似たイラストが使われて驚きました。その上、私の絵を見た人から「角川文庫の表紙とよく似ていますね」と言われ、まるで私の方が影響を受けたように思われることになってしまい、このシリーズはやめてしまいました。
これはまったくの偶然の一致だったのか、それともその表紙を描かかれた方が「日洋展」を見て、それをヒントに描かれたのか、今となってはまったくわかりません。ただ、このことがなければ、もう少し多くのシリーズが生まれていたように思います。
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